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「ただいま。ちょっと早く終わったからお土産買ってきた。産地名物!」
元気いっぱいの藤色に、必死でしんみりしていた自分をごまかし、作り笑いを浮かべる。
「おかえり、藤色。シャワー浴びる?」
「いいや、温泉ロケだったし、帰りも浴びたし」
そういえば、そうだっけ。
「なんか元気ないな、寧音」
「べ、別に寂しくなんかなかったんだから」
「そ? オレは寂しかったけど」
「!」
思わずあたしの顔は熱くなる。
素直すぎて、心臓に悪いよ藤色。
「温泉卵も買ってきたし、食べればいい」
「ありがとう」
「今度は一緒に行こうな」
「うん」
「もちろん一つの布団で同じ部屋でな」
「……やっぱ行かない」
「えー」
いつも通りのくだらないやり取りが、楽しい。
あたしの色のなかった日常が、色づいていくのがわかる。
あたしは思わず藤色の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「ありがとう」
そう言って返事も聞かずに、ベッドにもぐりこんだ。
きっと藤色は顔を真っ赤にしているのだろうと思うと、なんか笑えた。
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