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「……あたしを、おろすように言わなかったのは、感謝してるけど……やっぱり、芸能事務所の社長の愛人ってなると、騒がれるし。うちは地味な母子家庭だったから……近所で騒ぎにはなりたくないの。理解してほしい」
「お小遣いをあげよう寧音」
彼女の名前は寧音と言うらしい。
今時の名前だな、と思いながら、よく似合う名前だと感心する。
頻繁に事務所の中でボーっとしてるのを見かけるたびに、可愛いなって思っていた。
広い事務所に迷子になっていた小さいころは、案内もしてくれた。
「……いくら?」
「いくらでも。ただし条件がある。」
「お母さんのお葬式には出させないわよ」
「そうじゃない……まあ、まだ考え中だ」
社長はきっと、寧音さんとどうにかして自分をつなげておきたいのだろう。
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