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とりあえず、今日はお開き。もう帰ろう、ということになった。
私は当然、いっちゃんの車で、ふう君とみー君と一緒に帰るものだと思っていた。
「一矢。今日は与織子を借りるぞ?」
いっちゃんにそう言う創ちゃんに、私は腕を引かれていた。
「は?何言ってんだ、お前。許すわけないだろう!嫁入り前だぞ!」
噛み付くように返すいっちゃんに、創ちゃんは涼しい顔で「澪も嫁入り前だが?」なんて言っている。
そして、そのまま創ちゃんは、その場にいた兄たちに投げかけた。
「この中で、誰か今日ちゃんと家に帰るやつ、いるのか?」
何故か3人とも、黙ってそれぞれが視線を泳がせている。
「ほら見ろ。与織子を一人にはできないからな。問題ないだろう」
いやいや、ちょっと待って。私は問題、大ありだ。私だけ口をパクパクしていると、近くで私たちを見ていた澪さんが、とにかく笑っていた。
「もういいじゃないの、一矢。私たちも帰りましょうよ。どうせうちに来るつもりなんでしょ?」
いっちゃんはそれに、物凄い渋い顔して「まぁな」なんて答えている。
「与織子ちゃん。よかったら創に付き合ってあげて。大丈夫。きっと何もしないから」
なんて澪さんは笑っていて、創ちゃんは「うるさい……」と小さく返していた。
結局、みんなその場で別れることになった。ふう君とみー君はいったいどこに……と思ったけど、もう聞くだけ野暮なのかも知れない。
ホテルの駐車場で、創ちゃんの車に乗ると、エンジンをかける前に創ちゃんに尋ねられる。
「やっぱりその……。家に帰るか?」
ハンドルを握ったまま前を向いて、創ちゃんは小さく言う。
「帰るつもり……だったんだけど……。その、着替えも何もないし……」
私がそう答えると、「確かに、そうだよな」と寂しそうに呟いた。
「……だから。創ちゃんが……うちに泊まればいいかなって……」
恥ずかし過ぎて俯いてそう言うと、カチャリとシートベルトの外れる音がして、私は抱き寄せられていた。
「本当に?何もしないって約束できないかも知れないけど」
顔は見えないけど耳元で囁かれて、心臓の音がうるさいくらい聞こえる。
「いい……よ。嫁入り前だけど、創ちゃんのお嫁さんにしか、なるつもりないから……」
そっと私が背中に手を回すと、ふふっと創ちゃんは笑った。
「あまり俺を煽らないでくれ。事故起こしそうだ」
「それは困るよ。ちゃんと連れて帰ってね?」
創ちゃんは体を起こして私を見る。
「安全運転に努めるよ」
そう言ってから、私にキスをした。
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