ネネ

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 秀吉が木下藤吉郎と呼ばれていた時分にネネは秀吉に嫁した。父浅野何某は足軽頭であったと言うから、当時台所奉行やらの職でようやく頭角を現し、ただの小者から脱しかけていた秀吉にとっては身分の高い良家の子女が嫁に来てくれたと言ったところであろう。  容姿に関して言えば、後年この夫婦が諍いを起こした時に主人である織田信長がネネ宛に送ったとされる仲裁の手紙に『十のもの二十ほどにも』見えと褒められている。織田信長と言えば権謀術数に満ち満ちて、表裏人、隙間数えの御大将と呼ばれるほどの嘘の名人であるが、自分の家臣や味方と思う人には率直な人柄で、おべんちゃらを言う人ではない。  その信長褒めているのだ。絶世の美人ではないにしろ、十人並み、水準以上の容姿であったに違いない。  一方秀吉と言えば、『人かと思えば猿、猿かと思えば人なり』と言われたほど容貌の方はからっきしであった。  え? 猿可愛い? それは失礼しました。  秀吉の同僚であった前田利家が嫁に来てくれと先に申し込んだが、それを断って秀吉の下に嫁したという噂もある。  若年の頃の利家はそれなりの美丈夫であった。それを断って、ちんちくりんで容貌もお猿の所へ嫁に行ったというのが本当ならば、『男は顔じゃない』を地で行く有難きニョショウである。
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