0人が本棚に入れています
本棚に追加
梅雨が明けた日だったんです
弾けるような日差しでいっぱいの坂道
真白の日傘をさして歩いていた
道脇の色褪せた紫陽花たちが
誰かの忘れ物みたい
花言葉なんて知りたくなかった
移り気という言葉ぴったり
失恋した痛みもそのままに
私は眩しい坂道を登る
運命の恋だと
私だけが信じていたなんて
思い出も彼ももう戻っては来ない
歩いても歩いても
そこには紫陽花の植垣
めくるめく恋の思い出を振り払うように
光の向こうへ駆け出した
坂道のてっぺん
息切れと一緒に涙が込み上げて
登りきったら日傘を
あの太陽めがけて放り投げる
私の涙を乾かして
音を立てて転がった日傘に
近づく一人の影
そう今日は梅雨が明けた日だったんです
季節が変わった
そんな日に出会いが待っていた
7月16日の夏の坂道で
日傘を拾ったあなたに
一輪の向日葵を持っていたあなたに
はにかんだ顔が涙越しに揺れた
最初のコメントを投稿しよう!