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「なんで来んかったんですか! どうなりました?テープもうとっくに剥がれたでしょう? 傷開いてませんか?」
「……」
「感染起こしたらどうするつもりですか! ちゃんと処置すればなんてことない傷も、悪化すると大変なんですよわかってますか!!」
そう言って俺は、男の黒いシャツの袖をガシッと捲った。思った通り。
「これ……痛いやろ……」
「別に……」
「熱、出てませんか?」
「平気……多分」
「ちょっと来てください」
腕の裂傷周囲が、かなり腫脹している。
中に膿が溜まっているだろうか。
抗生剤出した方が良さそうだし、もしかしたら切開して排膿した方が早いかもしれない。
怒りより処置のことが浮かんで、腕をグイッと引っ張った。
「おいちょっと待てや」
隣の男が、俺の肩を掴んで睨みつけてくる。
「なんですか? 処置だけさしてください」
「なんでお前がそんなことするん」
「最初の処置をしたからです」
「あぁ……お前があの日の奴か……」
あの日、というのが出会った日のことを言っているかは知らないが、ピクリと目元が小さく動いたのが、わかった。
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