服の中の痛み①

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「あのさぁ、手……離してくれへん?」 「逃げるやろ」 「逃げへんから」 「嘘やん、すぐ消えそう」 「捕まれとるの……痛いねん」 強く力が入っていたのか。 必死で逃げられないように腕を掴んで、ずっと連れて歩いていた。 病院から家に抜ける暗闇の公園を歩きながら、そっと、手を緩めた。 「やっぱ逃げるやろ……」 「どんだけ疑っとんねん」 「信じられる要素がどこにあるん」 「知らんわそんなん……」 静かな口調で、変わらぬやりとり。 埒があかない。 緩めた手で、するすると男の腕をなぞった。 こんなこと、男としたことなんてないけど。 逃げられるよりマシだ。 暑い日に、少しだけ冷たい指先を、キュッと握った。なぜか、ドキドキして、そんな自分の心の音の意味がわからなくて。ジッと前を見て歩いた。 「どんだけ信用ないねん」 「あるわけないやんか」 小さくそう言い合って。 手を繋いで、家に帰った。
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