服の中の痛み①

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♢ 「いってぇぇええっ!!!」 「誰のせいですか!!」 「俺のせいや無いやろ!」 「おまえのせいやろぉぉお! アホかっ!」 膿が溜まってそうな場所に、少しだけメスを入れた。ほんの少し、皮膚を開いただけ。 どんだけ痛みに弱いんだ。 暴れすぎだし、叫びすぎだし。 「麻酔あるって言うたやん!」 「あれは縫合の時ですよ! これは切開排膿! ちょっとしか切っとらんし、麻酔の方が痛いっすよ」 本当はいろんな麻酔の種類もなくはないけれど。 家でやるならまぁいいだろう。麻酔なしでも許されるレベルの、排膿。 ほら、出た。 白い膿が、どろりと出てきた。 「気持ち悪っ」 「アンタのやからね?」 ゆっくりと、排膿して、ガーゼでそれを丁寧に吸い取る。 「あんたさ……」 「蓮」 「は?」 「田中蓮です。蓮」 「蓮……さぁ、医者?」 「はい、まだ新人ですけどね」 「へぇ……」 「アンタは……あー、アオ?」 「うん、アオ……」 「アオ……」 特に言いたいことも聞きたいこともなくて、というか目の前の処置に集中していて、アオ、という名を呟いて、黙った。
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