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服の中の痛み②
【side アオ】
この1週間。
サツキさんの狂気は、どんどん増していった。
もともと、歪んた関係だった。
サツキさんは歪んだ人で、俺も、歪んでいて。
その歪みが、噛み合わなくなったのか。
突然、狂気に変わった。
「なぁアオ、綺麗やで? アオ……」
そう言ってきつく縛った俺に、爪を立て、歯を当て、そして強く強く、折れるんじゃないかというくらい抱きしめそして、叩き続けた。
「痛い……痛いサツキさん……いた……い……」
痛みと同時に与えられる刺激。
「アオ、俺から離れていくん? アオ、ずっと俺のそばにおるやんな?」
コクコクと頷きすがるように見上げる俺を、満足そうに見下ろすサツキさんは優しく、優しく撫でた。
でも俺も、多分歪んでいるから。
俺もとっくに狂っていて。
これが、サツキさんの痛みなんだと思った。
何かわからない、サツキさんの痛み。
それを俺が少しだけ受け取って、俺の孤独が少しだけ、満たされて。
だから、俺は、サツキさんのそばにいる。
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