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「旦那様からのプレゼントですよ」
重たい。きれいよりも先にそう思った自分を呪いたい。
「ダイヤ?」
「きれいですね。奥様がきっとエステ中に寝ると思うからこっそりはめてくださいという希望で」
「これっていくらくらいですかね?」
「さあ」
重たいよ。きれいだけどデカすぎ。
失くさないように指を曲げて部屋まで戻った。
「いろりさん、おかえり」
あ、浴衣姿だ。よくお似合い。
「指輪、ありがとうございます」
「緩くない?」
「はい」
「寝ているときにこっそり測ったんだ」
「へえ、気づかなかった。でも私、あなたにはめてほしかったな」
「じゃあ、これを」
結婚指輪だった。
「こんなにいろいろもらっていいの? 女性からは時計を返すだっけ?」
確か、指輪の半分くらいの金額でお返しするのよね。私のお給料で足りるはずがない。
「大丈夫。これから大事なものをもらうから」
指輪を重ねづけしたら、更に重たい。
「文さんのは私が。失礼します」
文さんの薬指にもちょうどいい。結婚式みたいね。
「お揃い」
と文さんが笑う。うん、しっくり。
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