特別な土曜日

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 カーテンの隙間から、陽の光が差している。泰雄は、陽が明るく空を照らしていても、まだ寝ていることが許される朝が好きだ。  しかし、今日はそうもいかなかった。社用携帯の着信音が、土曜の朝の静かな寝室に鳴り響いている。電話に出ると、部下の焦った声がした。 「部長! 休日に本当に申し訳ないのですが、お取引先の隅田様から先ほどご連絡がありまして……」  予想通りの内容だった。布団から出ると、隣で妻の美代子が唸りながら目を覚ます。 「ちょっと、なに?」 「少し会社に行かなきゃいけなくなったんだ」 「えー? あなた、今日はただの土曜じゃないのよ、分かってる?」  呆れた声を出しつつ、妻はベッドからてきぱきと抜け出してクローゼットへ向かった。シャツとネクタイをぱっと出して、渡してくる。 「分かってるよ。だから、少しだけ手伝ったらすぐ帰ってくる」 「もう、ちゃんとすぐ帰るって最初に言っておくのよ。今日はせっかく明美が……」 「うん。すぐ帰ってくるよ。準備任せちゃうことになって悪いけど、よろしく頼むよ」 「はいはい」  そうこう話しているうちに、簡単な身支度を整えることができた。美代子はいつも、どこかぼんやりしている泰雄のことを、文句を言いつつ甲斐甲斐しく手伝ってくれる。 「じゃあ」 「はい、気をつけて。二時までには帰ってきてね。明美は楽しみにしてるんだから」 「おう、分かってるよ」
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