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1.初めての体験
高校1年で、スマホを手にしたのは、クラスではほぼ皆無に等しかった。
初めてのバイト…。
初めての友達…。
初めてのバーベキュー…。
全て初めてづくしだった。
戸部真理亜は不登校気味で、長い間友達もいなかった。でも、それは普通で自分や家族が変わってるとは思いもしなかった。先輩の家に行くまでは。
バイト先で知り合った葵先輩の家は、自転車で15分程の所にあった。 グレーと黒で全体をシックにまとめ、落ち着いた感じのする家だ。
今泉葵は高校3年生。知性を感じさせる溌剌とした切れ長の目に、大きな口元、透き通るような白い肌は、街でスカウトが来ても不思議ではない程の美貌だ。
それでも、鼻にかけるどころか、気さくで面倒見がよく、仕事はキチンとこなした。男女共に陰口など聞いたことがない。特に女性は敵わないと判断すると逆に誉めちぎった。その方が自分の株が上がるからだ。
ただ真理亜は、純粋に親しみを感じていた。
楓花の話だと、幼少期に母親を亡くして父親と2人暮らしで、気を使わないでいいからと誘われた。気難しい両親を説得して初めての体験が叶った。友達のいない真理亜にとって、今日は特別な日になって行くことになる。
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