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2.肝試し
玄関先には、黒いプランターに植えられた真っ白な夕顔の蕾が目に入ってきた。入って左手が和室、真っ直ぐ突き当たりがDK、右が6畳の洋間の葵の部屋になっていた。
洋間には、北川大宝がいた。葵とは従兄弟同士で真理亜と同じ1年2組だ。
大宝はゲームの手を止めて、いきなりこう切り出した。
「楓花。こないださ、友達と幽霊が出るって場所に肝試しに行ったんだけどさぁ…」
「なになに」
楓花が食いついた。
大宝は、ゆっくりと、さらにトーンを低くして話を続けた。
「でさ…深夜の…1時30分頃だよ。ピタッピタッて音がしたと思ったらさ。…」
「…思ったら…?」
「…ベビー服を着た女の子が…裸足で歩いて来て…それで…『苦しいよぉ…オギャア…オギャア』って泣くんだ。俺、腰が抜けて歩けなかったよ」
「え~!怖~い!」
真理亜はたまらず楓花にしがみついた。
「そこってさ、修理工場の跡地だよね…。それとさ…」
真理亜の友達の楓花は耳年増だ。怖い話と噂ばなしが何よりも大好物だ。近所の噂話や両親の会話、芸能人の話題など、その手の情報はとにかく素早い。
「…なに?」
「でさ…そこの跡地から西に100㍍程坂道を下ったとこにある山側のカーブミラーの辺りにも女の人が映るらしいよ」
「知ってるよ…いつも『返して』って…言うんだよね」
大宝は葵の方を見ながらそう言った。
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