濃姫

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(今日も殿は夜中にフシドを抜け出して、どこかへ行ってしまわれている。一体何処へ?)  新婚数ヶ月、帰蝶と信長は床を共にするのだが、何故か信長は夜半にこっそりと抜け出して何処か行ってしまうのだ。  他に愛しい女が居て、私に隠れて会いに行ってるのでは・・・。  もし、そうであったら結婚当初からカミーラ婦人という愛人のせいで不幸な結婚生活を送らなければならなかった英国のダイアナ妃のような目にあっていたわけだが、はたして?  帰蝶は起き上がって夫信長を待った。  大分経って、信長が戻って来た。 「殿、どちらへおいででしたか。」  と切り口上に信長に言った。いきなり、詰問口調である。相当気が強い。 「いや、ちょっと。」  信長は歯切れ悪く誤魔化そうとする。 「ちょっと何ですか。私は信長様の妻。教えて下さるまで殿を寝かせません。」 「いやあ、あんまり人には話せない事なんだ。」 「話せないとは、どういう事ですか。きっと殿は私がマムシの娘なので、本当は私の事が嫌いで、きっと別のオナゴの所へでも通われているのでしょう。」  帰蝶は興奮のあまり、懐剣で喉を突いて自害でもしかねない剣幕。 「仕方ないなあ。帰蝶だから、話すけど誰にも言うなよ。」 「帰蝶は殿の妻です。夫に黙っていろと言われれば誰に言うものですか。」 「実は美濃の斎藤方にこっちに寝返ってる者がいて反乱を起こしたら、のろしを上げる約束になってる。それを合図にわしも美濃に攻め込むという計略だ。」 「・・・・・・。」  数カ月後、美濃で斎藤家の重臣二人が処刑されたという方が伝えられた。  信長は上手く妻帰蝶をペテンにかけて、斎藤家の力を削いだとほくそ笑んだ。
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