濃姫

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 尾張の国の国主織田信秀の倅三郎信長が嫁をめとった。  相手は隣国美濃の国を牛耳っている斎藤山城守道三の一人娘だ。  名を帰蝶と言う。  世評に名高いすこぶる付きの美人で、父の寵愛も著しい。  一方、信長は乱暴極まりないウツケ者と自分の家中の者達から酷評されている嫌われ者だった。  まあ、あの道三がかわいい娘を信長なんぞに良く嫁がせたものだ、きっと信長がウツケなんで、娘を縁付かせといて、いずれバックリ尾張を食っちまう腹づもりなんだぜ、と口さがない者の囃す事、囃す事。  道三無類の戦上手で周りの国々からマムシと恐れられていた。  嫁を迎える尾張の国からしてが、ちょっと前に信秀が兵を率いて美濃に攻め込み、道三にコテンパンにのされて逃げ帰って来たくらいだ。
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