詩「真夜中の幽霊」

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真夜中に幽霊が出る理由は きっと寂しさに酔いたいからなのです。 地上すれすれの空間で ぶつかり合う雨の音 静寂として切り取ればいいのか 惰性として切り取ればいいのか 空の定義を私はまだ知らないので 水没した街を想像しながら あなた以外の思い出を 深く 光の届かない場所に そっと置き去りにして 「幸せとは  日々目の前の人に届けた  感謝の相対的な跳ね返りなのよ」 彼女が教えてくれた 夕暮れの言葉は 太陽の光を吸い込んだ 形のない布団のように 頭の中に広がっていく宇宙のように 手の届かない深海のように そっと膨らんでいく 「ほら  夕暮れの風に乗って  一羽の鳥が  頭の上を飛んでいったわ」  その方角を ベランダから 家族揃って ただ 見つめる そんな未来がやってくる 「真夜中に幽霊が出る理由は  きっと寂しさに酔いたいからなのです。
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