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青い箱を持った人が、箱の蓋を開けて傾け、床にぬらぬらと光る液体をばら撒いていく。床一面に綺麗に敷き詰められていったその液体は、ところどころ虹色にも見えた。
「……!……!」
小屋の外から誰かが叫んでいる。どんどんと強くドアを叩いている。
そんなに強く叩いたら壊れちゃうよ、と思ったけれど、古く見える木製のドアは案外丈夫にできているのかびくともしない。
「白花、おいで」
名前を呼ばれて振り返ると、それは液体をばらまいていた人だった。にっこりと微笑みかけてきながらも、どこか寂しそうにしているその人の腕の中に飛び込むと、足元で赤い明かりが灯った。私たちの周囲を取り囲むように灯る明かりは、心地よい温もり与える。
この温もりがやがて全てを包む時には、私たちはいなくなっているだろう。少しも怖くはなかった。ただ、胸が苦しくなるほどの切なさがあるだけで。
「白花」
優しく呼び掛けながら、その人は私の頭を撫でる。
「大丈夫、必ずまた会える。俺と白花は二人で一つ。そうだろう?」
「そうね。だって私たちは」
言葉を言い終える前に、徐々に意識が遠のいていく。ゆっくりと薄れゆく意識の中で、最後までその人の顔を刻み付けておきたかったが、霞がかって判別がつかなくなった。
「白花」
その人が何かを呟く。ごめんね、とも、ありがとうとも聞こえて、はっきりとは分からない。
唇にそっとかさかさに乾いた皮膚が触れてきたのを最後に、暗闇の中へ落ちていった。
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