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「お義父さん、娘さんを僕に」
「君に、お義父さんと呼ばれる筋合いはない」
その言葉で場の空気は一気に張り詰めた。和室に座る誰もが息を潜めるように言葉を消している。沈黙の時間が続き、皆が声を発することを恐れた。
やってしまった、と思った。
僕はいつもこうだ。
グラスを持つ手が震えている。
二人の結婚について話し合うために開かれた集まり。一生に一度あるかないかの時間だ。当然のように重々しい雰囲気になってしまった。
その原因を作ったのは紛れもなく僕の言葉だろう。
昨日の夜、あれだけ頭の中でシミュレーションを繰り返していたはずなのに、なぜ僕はこんな失敗を犯したのか。
『お義父さん』という呼び方が脳裏にこびりついて離れないまま朝を迎え、意識しないようにしないように、と頭の中で考えていたはずなのに。
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