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「自主退職していただけますね」
社会人としてベテランの二人に、まだ新人みたいな蘭がかなうはずもない。
「……はい」
自主退職でなければ、人材派遣会社へ通って次の仕事を探すことになる。どちらにしろ、この会社に蘭は不要だということ。次の仕事が見つからなかったとしても、この会社に蘭の居場所はない。
蘭は元々、人と対立するのが苦手だ。相手に合わせて、それでうまくいくなら、それでいいと思ってしまう。
特に女子の場合、グループ内の小さな対立が発端となって、クラス内で居場所がなくなるくらいのことにだってなりかねない。対立するくらいなら、ことが大きくならないうちに身を引いた方がいい。
それを学んだ高校時代の記憶が脳裏に浮かぶ。クラス内の中心グループで孤立し、ほかのグループに移ることなく一匹狼を貫いたあの子は、今どうしているのだろう。名前は確か、森野。
あの時、中心グループから睨まれないように、彼女に関わらないようにしていたことへの報いが今頃やってきたのか。
「沢口さん、話が早くて助かるよ。ここだけの話、まだ若い沢口さんには退職金を割り増しで出すからさ。ね、部長」
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