フローリストえにし その花屋は縁をつなぐ

門出を飾るスイートピー

　就職に関していえば、インテリア好きの学生からの人気は高い。今の大学三年生を対象にしたアンケートでは、同業種の中で入社したい会社ベストテンに選ばれたそうだ。宝屋インテリアの新卒採用は総合職のみ。将来的に世界各地に飛んでもらい、インテリアの買い付けをすることを前提としている。
　そして蘭は数少ない一般職だ。
　総合職のみの募集で、なぜ一般事務がいるのかといえば入社時の入り口が異なるからだ。一般事務は派遣会社を通じて、紹介予定派遣として採用される。四月から正社員採用の総合職に対し、一般事務は派遣社員としてスタートする。半年の派遣期間経過後、宝屋インテリアと派遣社員が同意すれば正社員として採用される。
　蘭は半年の派遣期間を経て、去年の十月に正社員となったばかりだ。派遣期間との大きな違いは時間給から月給に代わり、賞与の支給と有休、交通費の支給があることくらいだ。仕事の内容に変化はない。
ただ非正規から正社員になったという安心感は大きい。毎月決まった金額が入ってきて有給休暇も取れる。
　それは毎朝の通勤電車の顔ぶれと同じように、蘭がこの会社を辞めない限り変わらないものだと思っていた。