門出を飾るスイートピー

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 灰色のブラインドが下げられた窓の向こうには、かすかに空の灰色が見える。  十人程度が入れる会議室で、先方が来るのを一人で待つ。いつ来られても大丈夫なように冷静を装って座っているけれど、内心は穏やかでない。足はがくがく震えているし、手は緊張で冷たくなっている。心臓はバクバクと音を立てていて、静かなはずの部屋にバクバクという大きな音が響いている。  ――どうしよう。私、何したんだろう……。  所属部長経由で蘭が突発な人事面接を伝えられたのは、つい数分前。朝礼を終えて、業務を開始しようと矢先だ。  身一つで会議室へやってきてから、事の重大さに動揺し始めた。 所属部長と賞与の際に行われるフィードバック面接以外、人事面接をしたことがないから何を聞かれるかわからない。何か問題になりそうなことをした覚えもない。私が気づいていないだけで業務上の大きなミスがあった……としたら、まずは所属部長の領分だ。人事異動は基本的に四月と十月、今は十二月だから定期異動の話ではない。可能性としてあるなら、産休に入る方の引継ぎか。  ドアをノックする音に、ビクリと体が動く。 「は、はいっ!」
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