142人が本棚に入れています
本棚に追加
テラには、最先端の医療設備を持つ研究所も入っており、緊急時は患者を受け入れていた。
「紗夜さん、行きましょう」
(ぼ、僕もいま〜す)(書くまでもなく淳)
「淳一様ぁ〜」甘い声でヴェロニカ。
振り向く鼻先に差し出された黒いもの。
「あ、これってもしかして、シュ!ってやると記憶を消されるや…」
「シュ!」 シュ!にまで遮られる淳。
崩れる淳をティークが支える。
「意外とよく分かってるじゃん」(T2)
「大丈夫、直ぐに目覚めます」
心配気な紗夜をラブがフォローする。
7階の医療フロアに着く。
彼女は既に意識を取り戻しており、医師が診断を始めていた。
「えっ!ラ…ラブ❗️」
生の本人に驚く瑠美と雅美。
「どうして、こうして、こうなるの?」
ラブが神に尋ねる。
「どうしてか分んねぇが、良く拾い物しちまうんだよなぁ。ここが一番近いから来ちまったってわけよ」
あの時の異様な感覚に不安を感じ、ラブのもとへ連れて来た神であった。
「大丈夫。特に異常はない様だ。軽い貧血か疲れではないかな、念のため紹介状を書いておくから、帝都医大の専門医に診てもらいなさい。お大事にね」
この医師が診る限り、確かに異常はなかった。
「ありがとうございます」
深くおじきする瑠美に、雅美も従う。
「ここじゃ何だから、ラウンジにでも行きましょうか」
と言って神を見るラブ。
「俺はこれで失礼するぜ。後はよろしくな」
「ありがとう、神。また今度ね」
ラブに見つめられ、赤面する神。
「お、おぅ」後ろ手で合図して去って行く。
(ラブとあの飛鳥神。この二人どういう…)
いつもながら、不思議に思う紗夜。
(色々あんのよ、私の世界にはね)
すかさず応えるラブ。
運ばれてきた、カモミールティーとミックスジュースに驚く二人。
二人がいつも飲むものであった。
その顔に笑顔で応え、ラブが問う。
「瑠美さん。昨夜はご自宅で?」
「は?あ、はい。この雅美が泊まっていったので、寝たのは遅かった…です…が…えっ⁉️」
恐怖に似た驚きを、ラブと紗夜は感じた。
瑠美の瞳は、サングラス越しのニュースに釘付けであった。
全員がそれへ向く。
「先ほど、帝都大学経済学部の木島聡さん20歳が、工事中のビルから落下した鉄板の下敷きになり、搬送先の病院で死亡が確認されました。事故当時、現場では…」
「瑠美、あの人って…」
その先は怖くて言えない雅美。
その理由を読み取ったラブと紗夜。
しかし…(これは…いったい何?)
瑠美の心理に不可解で、異様な気配を感じた。
(ラブ様、二人共昨夜は、瑠美様のお屋敷にいたことが確認できました)
ラブの頭に、アイからのメッセージが届く。
「瑠美!大丈夫か❗️」
外務大臣、菊池忠文が駆けつけてきた。
ラブも気付く。
「菊池大臣、『からだには』異常ありません。
ご安心ください」
「ラブさん。ありがとう。君には助けられてばかりだね。妻も感心してたよ」
「パパ、違っ…」
唇に指を一本当てて合図する紗夜。
「いえいえ、こちらこそミャンマーの件ではお世話になりました」
話を合わせるラブ。
ヤクザの組長に助けられたとは言えない。
「とりあえずは、今日はご一緒にお帰りください。奥様にもよろしく」
「そうだな。瑠美、忙しいラブさんに迷惑だ。帰ろう。では、来週の議会でまた」
「はい。よろしくお願いします」
礼を言って、テラを後にする三人。
「紗夜さん」
「はい。彼女には、何か違うモノを感じました。何かわからないけど、悪いものでは無い気がします。」
(ではあのレッド・アイは一体…)
正体が外れて、深まる謎。
「ん?あれ?ここは…あっ💦ラブさん!」
やっと気が付いた淳。
「さて、淳。帰りますよ」
「あ、でも確か…」
「デモもテロもないの!さぁ早く早く」
引きずり出される淳であった。
最初のコメントを投稿しよう!