4.深まる謎

4/4
前へ
/39ページ
次へ
テラには、最先端の医療設備を持つ研究所も入っており、緊急時は患者を受け入れていた。 「紗夜さん、行きましょう」 (ぼ、僕もいま〜す)(書くまでもなく淳) 「淳一様ぁ〜」甘い声でヴェロニカ。 振り向く鼻先に差し出された黒いもの。 「あ、これってもしかして、シュ!ってやると記憶を消されるや…」 「シュ!」 シュ!にまで遮られる淳。 崩れる淳をティークが支える。 「意外とよく分かってるじゃん」(T2) 「大丈夫、直ぐに目覚めます」 心配気な紗夜をラブがフォローする。 7階の医療フロアに着く。 彼女は既に意識を取り戻しており、医師が診断を始めていた。 「えっ!ラ…ラブ❗️」 生の本人に驚く瑠美と雅美。 「どうして、こうして、こうなるの?」 ラブが神に尋ねる。 「どうしてか分んねぇが、良く拾い物しちまうんだよなぁ。ここが一番近いから来ちまったってわけよ」 あの時の異様な感覚に不安を感じ、ラブのもとへ連れて来た神であった。 「大丈夫。特に異常はない様だ。軽い貧血か疲れではないかな、念のため紹介状を書いておくから、帝都医大の専門医に診てもらいなさい。お大事にね」 この医師が診る限り、確かに異常はなかった。 「ありがとうございます」 深くおじきする瑠美に、雅美も従う。 「ここじゃ何だから、ラウンジにでも行きましょうか」 と言って神を見るラブ。 「俺はこれで失礼するぜ。後はよろしくな」 「ありがとう、神。また今度ね」 ラブに見つめられ、赤面する神。 「お、おぅ」後ろ手で合図して去って行く。 (ラブとあの飛鳥神。この二人どういう…) いつもながら、不思議に思う紗夜。 (色々あんのよ、私の世界にはね) すかさず応えるラブ。 運ばれてきた、カモミールティーとミックスジュースに驚く二人。 二人がいつも飲むものであった。 その顔に笑顔で応え、ラブが問う。 「瑠美さん。昨夜はご自宅で?」 「は?あ、はい。この雅美が泊まっていったので、寝たのは遅かった…です…が…えっ⁉️」 恐怖に似た驚きを、ラブと紗夜は感じた。 瑠美の瞳は、サングラス越しのニュースに釘付けであった。 全員がそれへ向く。 「先ほど、帝都大学経済学部の木島聡さん20歳が、工事中のビルから落下した鉄板の下敷きになり、搬送先の病院で死亡が確認されました。事故当時、現場では…」 「瑠美、あの人って…」 その先は怖くて言えない雅美。 その理由を読み取ったラブと紗夜。 しかし…(これは…いったい何?) 瑠美の心理に不可解で、異様な気配を感じた。 (ラブ様、二人共昨夜は、瑠美様のお屋敷にいたことが確認できました) ラブの頭に、アイからのメッセージが届く。 「瑠美!大丈夫か❗️」 外務大臣、菊池忠文が駆けつけてきた。 ラブも気付く。 「菊池大臣、『からだには』異常ありません。 ご安心ください」 「ラブさん。ありがとう。君には助けられてばかりだね。妻も感心してたよ」 「パパ、違っ…」 唇に指を一本当てて合図する紗夜。 「いえいえ、こちらこそミャンマーの件ではお世話になりました」 話を合わせるラブ。 ヤクザの組長に助けられたとは言えない。 「とりあえずは、今日はご一緒にお帰りください。奥様にもよろしく」 「そうだな。瑠美、忙しいラブさんに迷惑だ。帰ろう。では、来週の議会でまた」 「はい。よろしくお願いします」 礼を言って、テラを後にする三人。 「紗夜さん」 「はい。彼女には、何か違うモノを感じました。何かわからないけど、悪いものでは無い気がします。」 (ではあのレッド・アイは一体…) 正体が外れて、深まる謎。 「ん?あれ?ここは…あっ💦ラブさん!」 やっと気が付いた淳。 「さて、淳。帰りますよ」 「あ、でも確か…」 「デモもテロもないの!さぁ早く早く」 引きずり出される淳であった。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

142人が本棚に入れています
本棚に追加