ねむりひつじとゆめのたまご

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 そろりそろり……ぽふ、ぽふ……2匹が歩きだします。ゆっくり、ゆっくり、静かに。他のたまごをおどかしてはいけませんし、手にしているたまごも守らなければいけません。あっ、たいへん! いきなり波打った地面にまくらひつじが転がり、たまごがぽーんと手から飛び出しました。あわやたまごの大ピンチ。ぼふん! てのりひつじが身を挺してたまごにそのやわらかな体をぶつけ、そのまま下敷きになる形でボテッと落っこちました。  おろおろするまくらひつじの見ている前で、にじにじとてのりひつじは這い出し、たまごの周りをクルクル回って無事を確認して メェ と 小さく鳴きました。小さいけど強いてのりひつじです。  2匹はもう1度歩きだしました。今度は地面の不意打ちにも負けません。そうして、ようやく着いたフカフカ地面にそーっとたまごを置きました。するとたまごから良い香りが漂いました。まるでお礼を言っているようです。2匹はクタクタでしたが、うれしそうにつぶらな瞳を合わせました。そして、たまごを見守ります。  ……こてり。  たまごに寄り添うようにてのりひつじが寝転がりました。たまごを挟んで反対側にいたまくらひつじも、ころん と寝転がります。てのりひつじとたまごとまくらひつじ。ひつじ達に挟まれたたまごはうれしそうで、たまごに寄り添う2匹の寝顔もシアワセそうです。  おやすみなさい。  時が来るまで、あったかい地面と不思議に揺れる大気の音を聴いて、やさしい心に守られて……みんな、みんな、良い夢を。
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