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「あなたが落としたのは、この金の斧ですか。
それとも銀の斧ですか。
…そう、あなたは正直者ですね。
では、この金と銀の斧も差し上げましょう」
世の中には、なんて太っ腹な神様がいるんだろう。
正直者には全部くれるだなんて。
逆に、欲を出して嘘をつくと、
金も銀も、鉄の斧まで全部没収されてしまうという。
じゃあ、最初から要らないものを泉に落としたら、どうなる?
それは、すべて回収され、証拠も残らないんじゃないんだろうか。
例えば…死体とか。
私は今、沼から現れた神様を、呆然と見つめていた。
そうだ、神様に「金か、銀か」と質問をされたら、
必ず「はい」と言わなくてはいけない。
わざと間違った答えを言って、
あの邪魔な死体をこの沼に隠さねばならないのだ。
神様は言った。
「あなたが落としたのは、
この生きている元気な老婆…ではありませんね?」
「はい、そうです。…ん?」
「…そうですか。
あなたは正直者で、バカですね。
三人分、差し上げましょう」
神様はにっこりと笑うと、生きている姑を三人突き返してきた。
あぁ、せっかく大人しくさせたというのに、また一からやり直しだ。
神様から頂いた総勢九名の口喧しい姑に囲まれながら、私はため息をついた。
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