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「……っていうお父様たちのシナリオ、どう思います? 」
街が見おろせる、王城の高い部屋。昼に式をした私とお姫様は、そこで初めての夜を過ごしていました。
「うーん、結果的にみんな幸せそうなら、意味はあったんじゃないの?」
「そんな呑気な……私たちは多くの人の自由に貢献したって言うのに、私たち自身には自由がないなんて、皮肉にも程があるわ。」
おもちゃを買って貰えなかった子どものように頬を膨らませて、私に行ってもしょうがない文句を言うお姫様。そう。この結婚は、実は政略結婚なのでした。
「ねぇ、約束しない?」
約束……?
「どっちかに本当に好きな人ができたら、結婚なんてブチ壊して、自分の人生を拓くの。」
本当に……好きな人……
「いつか私もあなたも、きっと素敵な恋をする日が来る。私たちの結婚は、その時までの同盟よ。」
「うん。わかった。」
こうして私とお姫様は約束の同盟を結びました。お姫様は恋を夢みて、目をキラキラさせていました。
でもね、姫様。恋は、相手に認められなければあまりに惨めなんだよ。夢のように雲の上でキラキラ踊るのも、死んだように深い泥の池に沈んでゆくのも、ぜんぶぜんぶ、計り知れない相手の御心次第。だから、簡単には言えない。言えない恋は苦しい。もし言えないまま時間切れが来てしまったらって、どうしようもなく不安になる。
「あのさ、姫様。もし私が……」
私がその時を迎えたら、本当の結婚をしてくれますか?
言葉の途切れた私に、お姫様はルビィのように透き通った瞳を与えます。
「いえ、何でもないです。」
こうしてお姫様と大臣の娘は、いつか必ず来るその時まで、幸せに暮らすのでした。
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