宝石の恋

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※※※ その夜、夢を見た。 幼いわたしが公園でブランコの前に飛び出してケガをした時の記憶そのままの夢。 泣き出したわたしに紅玉さんは、「大丈夫だからな」って何度も頭を撫でてくれた。 擦りむいた膝も肘も水で流してハンカチを当ててくれた。 夢の中でも思った。 紅玉さんは翡翠さんに似てるって。 双子の兄弟だもの、似てるのも当然かなって。 紅玉さんのわたしの頭を撫でてくれるその右手はとても温かくて優しくて…… いつの間にか、夢の中は、少年だった紅玉さんは、大人の翡翠さんにすりかわってて、大きくなったわたしの頭を撫でていた。 優しい右手だった。 わたしの大好きな手そのままで…… 不思議な夢、だけど、切なくて温かい夢だった─── そして、夢を見た次の日。 「……えっ!?」 胸がどくんと大きく音を立てた。 「紅玉さん……もしかして、左利きです、か?」 紅玉さんは躓いたわたしに左手を差し伸べてくれた。 「そう、僕は本来左利きなんだ。食事の時だけは右手で食べるけれどね」 微笑む紅玉さん。 紅玉さんはずっと左利きだったの? そんな…… だって。だって、幼いわたしは温かい右手の感触を忘れてない。 紅玉さんが左利きだったなんて、そんな! 「僕は左利き、翡翠は右利きだよ。それに、今の僕たちはそっくりではないけれど、昔は一卵性の双子のようにそっくりだったんだ」 紅玉さんは意味ありげにわたしを見た。 「両親でも間違えられるくらいに似てたよ。実際、間違えられていた」 眩暈がした。 幼いわたしのケガの手当てをしてくれたのは…… 優しい右手で頭を撫でてくれたのは…… 「そう、僕じゃない」 ぐらり、地面が揺れた。 「みずほさんのご両親から聞いたよ。みずほさんの初恋の相手は、僕じゃない」 じゃあ、わたしは! 酷い思い違いをしていたことに、頭の中が真っ白になった───
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