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「えっ!?結婚!?わたしが!?」
「みずほが、幼い頃からお嫁さんになりたいって言ってた方よ。素敵でしょう?」
わたし、一橋 みずほ。
お母さんが晴れ着を両手に、わたしの部屋に駆け込んできた。
「結納に着ていく着物はどっちがいいかしら?やっぱり右かしら?でも、左も捨てがたいわ。どうしよう、迷っちゃうわ」
お母さんはわたしに着物をあててはしゃいでいる。
「ゆ、結納って……?」
「お相手の方がね、ぜひ、みずほをお嫁にほしいって言ってくださってるの。みずほが幼い頃から大好きな人でしょう?その場で決めちゃったのよ」
結婚……?お嫁に行く……?
まだ短大も出てないわたしが?
「お相手の方は、式は、みずほが卒業する来年の春でいいって言ってくださってるの。ただ、家には早くに馴染んでほしいから、結納だけはすぐにしたいと仰って」
え? 家に早く馴染む?
「花嫁修行として、お相手の方の家に入るのよ」
「お母さん、あの、でも」
「とってもいいご縁でしょ?まさか、みずほを選んでくれるとは思わなかったわ。人見知りであまり人前には出ないから。……やっぱり右の卵色にするわ」
お母さんはわたしを見るととても嬉しそうに笑った。
「みずほの初恋だもの。叶えてあげたいわ」
「お母さん……」
わたしの初恋。
それは公園で遊んでいて、ブランコから落ちてケガしたわたしの手当てをしてくれた人。
とても優しいおにいさんだった。
大きな家に住む、おにいさん。
わたしが中学校に上がった頃には公園で見かけることもなくなってた。
わたしの初恋の人。
その人と、わたしが……結婚?
戸惑うわたしより、初恋の人のお嫁さんになれる喜びの方が大きかった。
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