宝石の恋

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※※※ わたしは、次の週末には藤原家の和室でひとり座布団に座り小さくなっていた。 大きな家に住んでいるのは知っていたけど、ここまでとは思わなかった。 和室の客間の窓の外には錦鯉が泳いでいるのが見える。 そして、見えるすべての庭木は綺麗に手入れされていて、この部屋に通されるまでにあちこちに花が飾られていた。 広い敷地に、大きなお屋敷。 わたしには不釣り合いすぎた。 帰りたい……心臓がバクバクする。 バンッ 障子が開くと同時に誰かが飛び込んできて、座布団に座って小さくなってたわたしの両手をぎゅっと握りしめた。 「ねえ、あなた、みずほちゃん!?翡翠のお嫁さんになる、みずほちゃんでしょう!?」 「は、はい」 びっくりして飛び上がりそうになった。 「翡翠ったら、みずほちゃんが来たのにまだ来てないのね。まったくもう!」 この女性は誰? わたしの手を握りしめてるけど、どうしたらいいの? 「母さん、みずほさんがびっくりしてるから離してあげなさい」 落ち着いた低い声が女性の後ろから聞こえて、見上げると紅玉さんと翡翠さんの顔に似た壮年の男性がおかしそうに笑ってた。 きっとお父さんだ。似てる……ってことは、目の前の女性はお母さん? 「初めまして、わたし、一橋 みずほです。今日からお世話になります!」 手を離されたわたしは慌ててふたりに挨拶をしてお辞儀をした。 「まあ、可愛い」 なぜか紅玉さんのお父さん、お母さんは初対面から好意的だった。 「翡翠ったら遅いわ」 「まあすぐに来るさ」 それからすぐに紅玉さんと翡翠さんが来た。 紅玉さんはわたしを見て微笑んでくれた。 顔が熱くなる。 紅玉さんのいる家に来たんだ。 今日から一緒の家に住むことになるんだ…… ドキドキしてたら、この家の主のお父さんが手を打つと、奥の襖がサッと開いた。 頭を下げた人たちが主の声で一斉に顔を上げた。 「皆の者に紹介しよう。彼女は翡翠の婚約者の一橋 みずほさんだ」 奥に並んでいたのは、同じ桃色の着物を着た女性たちと紺色の着物の男性たちだった。 「今日から花嫁修業のためこの屋敷に住むが、くれぐれも頼むぞ」 また皆は頭を下げた。 「みずほです。どうぞよろしくお願い」 します。と、言おうとして続きと、頭を下げるのを止められた。 「頭は下げるな」 翡翠さん? 「おまえは俺の妻になる。だから下げなくていい」 無愛想な翡翠さんの一言に、わたしは何も言えなくなった───
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