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七話 会敵
それは、昨日、強奪が起きた時の状況とたいしては変わらなかった。ただ違ったのはそこが街ということ、そして相手取るのは組織遊撃隊、そこらの非術士や非能力者で構成された警備隊とは訳が違う。青年の号令で突撃した土人形が打ち砕かれただの土塊と成り下がる。そして、その隙に男は腰にぶら下がっている無線機を持ち第一声は怒号と覚悟をし顔を離し電源を入れた。
「キサマ!今の今まで何をしていた!いきなりロンギヌスが飛翔してきて顔の横に突き刺さるし、遊んでくるといって」
プツン
と糸が切れるような音をたてて無線機から怒号が聞こえなくなる。
「やれやれ参ったねえ、、」
と男は軽そうに周りに目を向け一番挑発できそうな言葉を紡ぐ
「君たちは群れないと勝機すら見つけだせないもんね?」
と周りの建物に聞こえるように声を発する。すると、複数の建物から殺気が漏れ始める。
「ふむ、六か楽勝だ。」
と男が言い終わる前に乾いた音が弾け足元から煙が噴出する。
男は左人差し指をビルにいると思われる標的にむけたった一言の呪文、だがそれだけで人一人を死に至る言葉を口から紡ぎだす。
「ガンド」
ただその一言だがその一言でその部屋で拘束の準備をしていた術士が手や足を震わせ血を吐き崩れ落ちる。
男が指を差し一言、一瞬の出来事だった。
「生憎俺は一応透視が出来るんだよ。ってことは建物にいくら隠れても無駄ってことぐらいわかるよなぁ!」
と男───いやエンキドゥが叫ぶ。
「たいちょー神殺しのエンキドゥですってー俺のゴーレムはあいつにとって粘土とさして変わりありませんよ?」
と耐久型ゴーレムを製造している眼鏡の男、永田修造が言う。
隊長と呼ばれた青年、木瀬が手の関節をならし軽く跳ね始める。
「永田、今は静かに俺のアップが終わるまで耐えさせろ。」
「へい」
と何時も通り真剣な木瀬に永田は不満も一つ言うことができず、とりあえず最速で作り出せる最高のものを作りだし続ける。幸いエンキドゥ本人は、拘束術式を発動して動きを止めようと奮起している六、いや五人を楽しそうに嬲っていた。
「うん、判断が遅い。」
と、余裕な表情で次々にビルの壁を貫き、撤退を決めた術士達の頭を背後から打ち砕いていった。
エンキドゥは返り血を浴びその美しい顔に歪んだ笑みを浮かべる。それは、まさしく悪鬼のようだった。
だが、いくら殺人を楽しむ悪鬼でも自分が死の淵に立たされていると言う感覚はいい気がしなかった。
「よぉ、化け物弱いもの苛めは楽しかったか?」といつからいるのか後ろから声をかけられる。
エンキドゥはここまで怯えたことはなかった。自分がこの場で殺されるなんて感じた事はなかった。だがなんだ、なんなんだこの感じは、この心のそこから沸き上がってくる怯えは!
「うるさい、弱者が、声を発するな、」
「却下、少なくとも俺はお前よりも強い。」
その言葉で両者ともに凄まじい気迫で相対する相手を見つめる。
「"聖戦"防衛組織遊撃隊隊長、樹瀬直人参る。」
「神殺し斥候、エンキドゥ参る。」
かくして、神話並みの戦闘が開始される───
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