五話 他勢力 (2)

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五話 他勢力 (2)

街外れの港湾倉庫の上に黒コートを着た男は座っていた。男は煙草を吸いながら顔をしかめさせた。「不味いものを余計不味くするなよ、、」 それはあのビルへの言葉だった。 「噂には聞いていたけどありゃ相手としては嫌だな。」 とこぼしつつ、傍らに放ってあった鞄から双眼鏡をとりだし目に当てる。 「しっかり能力が建物に浸透してやがる、、この街全体がああなってしまえば対処できるのは桐間ぐらいだろう。」 男の名は寺野宗次(てらのそうじ)呼称(あだな)は掃除屋の傭兵団の団長である。 金をより出した方につくという主義の為業界では金の亡者と言われている。 だがその主義に見合うほど、彼らの腕は練達しており…仕事の評判も良い。 それは、其処らの富豪の手駒より強いと思われる程であった。 なにより問題なのは寺野自身の能力であった。 彼の能力は「唯我独尊」発動すると範囲内で発動されている全ての能力、また術式などをである。 いくら名の馳せた優れた能力者と言えどもこの能力の前ではただの人間と変わりがなくなってしまう。 ただこの能力は敵味方構わず効いてしまう為彼の団員のおよそ半分は非能力者、非術士などで構成されている。 そしてその兵士たちは寺野の能力が発動されていなくても能力者、術士とほぼ対等にやりあえる者達である。 ただ寺野自身が知っている限りではあるが、組織の桐間、反組織の天野そして、「楽園(エデン)」とは殺り合わない方がいいと考えていた。 「ですが、桐間、天野は分かりますが「楽園」とは別に殺り合ってもいいんじゃないですか?」 と寺野の傍らに座っていた女性が言う。 「何故そう思う?佐木さん」 「私の能力は右手で触れたものに左手で触れたものの能力をコピーする能力ですよ?団長の能力をそのライフルに複製して打ち込めばよくないですか?」 と、佐木と呼ばれた女性、、佐木円(さきまどか)は答える。 「ふむ。それは一理あるが、もし自分が色を塗った部分が自分の領域になる能力と、自分を中心にある程度の範囲が自分の領域になる能力が合わさる、とするとどっちの領域が優先されると思う?」 と寺野は聞く。 「色ですか?」 「いや残念ながらそうはならない。何故なら、自分の領域は塗った部分のみそれ以外の場所は全部相手の方になる。ということは、相手の範囲に入ってないのは靴裏の僅かな部分のみが領域になる。」 「なら団長の能力は色と同じく表面なんですか?」 「残念ながらそれも違う。俺の能力は主に地面より上を対象としている。だが彼奴の能力は地面より下を対象としている。」 「あぁ!わかった!」 と佐木は嬉々として言う。 「団長の能力が伝わるのは表面のみで相手はその下にもあるから能力効果は途絶えないんですね!」 「そういう事だ。───それに君の能力では当てたものの能力や術式を解除するものに変わってしまうからな。」 「そうですね!」 と佐木は軽い膨れっ面をし寺野の背中を軽く叩く、その年相応な表情や仕草に驚き苦笑しながら寺野は二本目の煙草に火をつけ吸い始める。 彼らのやり取りを見る者は誰も居らず、彼らの背後では日が沈みかけていた。
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