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「わぁ! 大きなワニさん!」
かわいらしい声に目をあけると、そこにいたのは、ももいろの小さなとりでした。ことりは草の上を、ほそい足でぴょんぴょんとびはねながら近づいてきます。
なんだ、こんなチビか。
ワニはがっかりしました。こんなに小さくては、おやつにもなりません。
「こんにちは、ワニさん」
ワニはへんじをしませんでした。口をあける力も、もったいないと思ったからです。ことりはチッチチッチとさえずり、ワニの前でとびはねています。
もう少し近づいたら、食べよう。
ワニはそう思いながら、ことりをじっと見ていました。小さなとりでも、なにも食べないよりは食べたほうがいいにきまっています。
そんな目で見られているとも知らず、ももいろのことりは首をかしげると、
「ひとりぼっちでさびしそうね」
と言いました。
さびしい?
ワニはそんな気もちを、知りませんでした。生まれたときから、ずっとひとりだったからです。
ことりはワニの目の前にとまり、にっこりわらって言いました。
「あした、お友だちをつれてくるわね」
今にもおそいかかろうとしていたワニは、ピタリとうごきを止めました。
こんなチビでも、2ひきになればマシだな。
ワニはにやりとわらって、ももいろのことりにこたえました。
「たのしみにまってるよ」
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