🦔❤️🐹ハリネズミさんとハムスターさん

新人ハリネズミ

　ことの発端は、少し前にさかのぼる。

「針山(はりやま)寧々子(ねねこ)です。一日も早く仕事を覚え、会社の発展に貢献できるように頑張ります。どうぞご指導のほどよろしくお願いいたします」

　新入社員として入社してきた針山の教育係として任命された私こと、毛利(もうり)絹代(きぬよ)である。

　針山の印象はそれこそ、若くて可愛い、であった。
　キラキラと女の子らしく、髪も肌も手入れを念入りにして、朝にはスムージーとか昼は温野菜弁当で夜は着圧靴下履きながらストレッチとかしてるんだろうな、と冗談交じりに話すと、

「えっ！　毛利さんってエスパーなんですかっ！？」

　と、どうやら本当だったらしい。

　そんなこんなで、針山とは始終一緒に過ごすことになった。
　教育係といっても会社内のルールとか仕事内容とかを教え、一日でも早く即戦力に育て上げるだけだ。
　とはいっても、新入社員というものはちゃんとやる気に満ち溢れている。

　以前、派遣でやって来た子は癖があって独特の世界観があるのか、とにかく扱いづらかったものだ。

　その点、針山は抜群のセンスというべきか、私の中では花丸満点の存在であった。
　とにかく素直で飲み込みもよくて、話し上手で聞き上手だ。

　正直、隣に立たれると、気が引ける。
　若々しい、彼女の内面から輝くオーラが、とにかく眩しいのである。

　週末になり針山の歓迎会を行うことになった。
　単にみんな日頃の鬱憤を晴らすべく、飲みたかったのだが。

　酒宴の席なのに、なぜか針山は常に私の側におり、やたらと世話を焼いてくれた。
　私も美人に弱いせいか悪い気がせず、ついつい酔った勢いで、代わる代わる針山目当てにやって来る男どもに、針山がどれだけ素晴らしいかを演説していた気がする。

「あー、私が男だったらメッチャ好きになっちゃう」

　完全に酔っぱらっていた。
　口が滑った。

　まぁとにかく、私は心底、針山のことが気に入っていたのだ。