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第2話
自宅に帰った僕は、メモに書かれた薬をネットで調べてみた。思いがけず情報を手に入れてしまい、小心者の僕はメモを持つ手がプルプルと震える。
「でもどうやって薬を買えばいいんだ? それに薬を買えるお小遣いなんてないよ…」
僕の家では大きな買い物はパパの黒いカードで支払うことに決まっている。ネットで何か買いたいときも、お願いしてパパを通さないとダメなのだ…。
「僕は修君みたく秀才じゃないから完全犯罪なんて無理だよ…。僕じゃママを助けられない…」
現実に気づき早くも行き詰まった僕は、情報を得る前よりもっと落ち込んでしまった。
◇◇◇
その日の深夜。僕は物音で目を覚ます。開いたドアからリビングを覗くとママがパパに殴られていた。
助けたいのに足がすくんでしまい、弱虫な僕はリビングに入っていくことも声をあげることもできない…。
ママは僕を連れて、これまで何度も逃げた。でもその度に、満面の笑みのパパがやってきて連れ戻されてしまった。
パパは仕事で成功していて外面がすごくいい。気が弱く専業主婦のママが離婚したいと周りに相談すると、我儘だの甘えだのと言われ、ママのほうが責められてしまうのだ…。
警察もママを助けてくれなかった…。厳重注意とかいうのをパパにしただけ。そのせいで今夜のパパの機嫌はいつもより悪い。
「何だ、まだ起きていたのか拓海?」
「あっ…」
覗いていたことに気づいたパパが僕のほうをジロリと睨む。すると瞼がピクピクと意思に反して動き、僕の体は恐怖でビクンと震え上がった。
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