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「さて、話はここで終わりません。その二人が生まれるには4人の人間が必要で、その4人のおじいちゃんおばあちゃんには、8人の親が必要で」
優一郎は呆れた。
「つまり、君は『陽キャ』ってわけか」
揶揄の響き含む言葉には、耳を貸さず、ヒカリは続けた。
「さらにその8人の人間には16人が必要で、その16人には……」
「もう、いいから」
ヒカリの話が天文学的に長くなりそうな予感がして、話を遮った。
その時のヒカリの笑顔と言ったら。
優一郎を論破できて満足そうに笑う。
一見すると意地悪にしか思えないのに、なぜ彼女がするとこんなにも愛らしいのか。
うっかりと彼女の微笑みに目を奪われてしまったことが悔しい。
だから、優一郎も反撃を試みた。
「それでも、死ぬときは一人だろ?」
「それも違うと思うな」
あっさりと否定してくるヒカリを、今度はどんな屁理屈を言うのだろうと好奇心半分に眺める。
「愛する家族に看取られるのなら、一人じゃない」
(ほら、やっぱり屁理屈だ)
優一郎は少しおかしくなった。
「物理的には一人で生まれて一人で死ぬんだろうけど、生まれてくるのにも家族は必要だし、亡くなるときにも家族が居るでしょ? だから、一人じゃない」
「天涯孤独だったら?」
「大丈夫」
根拠のない「大丈夫」だなと優一郎は密かに思った。
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