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ヒカリの両親はいわゆる転勤族で、ヒカリはあちこちに転校を余儀なくされていた。
いちいち悩んでもいられない。次の新しい土地がヒカリ達家族を待っている。新天地への不安をぬぐう為、ヒカリを励ます為に両親は何度も「大丈夫」「大丈夫」と語りかけていた。
その所為でヒカリもまったく根拠のない「大丈夫」が口癖になっていた。
そんなヒカリの何かあるとすぐに言う「大丈夫」に、これまで優一郎は何度も励まされてきたことを、優一郎は思い出していた。
どんなに落ち込んでいても、どんなに行き詰っても、誰かが隣で「大丈夫」と言ってくれるだけで、どうしてこうも心強くなれるのか。
ヒカリは絶対の信頼を優一郎に寄せていたし、優一郎はヒカリに言われるだけで立ち直る勇気が湧くのだった。
「天涯孤独でも、きっと天国で家族が待っているから大丈夫。寂しくない。一人じゃないよ」
今度はなんとも宗教的に語ってきた。
どんだけ引き出し持ってるんだよと呆れ気味にヒカリを見つめていると
「だから、さ」
不意に、ヒカリの頬に赤みが差した。
「家族にならない?」
「?」
急な話に思考が追いつかない。
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