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授業時間中も休み時間もずっとボーっとしている私の様子は周りから見てもおかしかったのかもしれない。
休み時間中何度かクラスメイトに
「三樹原さん大丈夫?」
と声を掛けられ、その度に笑顔を作って
「ごめん、大丈夫。ちょっと寝付きが悪かっただけだから。」
と誤魔化して。
そして迎えた放課後。
まっすぐ自宅に向かう気にはなれず、普段は行かない方向に足を向ける。
最初は新鮮な景色で少し気を紛らわせる事ができていたが、暫くするとやっぱり夏樹さんの事が頭に浮かぶようになって。
昨日の未明、たまたま話題に出た漫画に登場した幸せそうな花嫁さんを思い出して何の気なしに結婚の話題を振ったけれど。
彼女はそれをどう思ってたのだろう。
私の想いには気付いていて、できるだけショックを与えないようにと興味のない振りをしていたのだろうか。
内心それを煩わしく感じていたりしたのかな。
だから私には気付かれないように準備を進めて。
もしかしたら半年くらい後には今のお家を引っ越して、ゲームやSNSのアカウントも消してしまって私との関係を断ってしまうつもりだったのかも。
所詮、私達の関係なんてそれで絶たれてしまう程度の薄いものなのだから。
ネガティブな思考ばかりが脳内をぐるぐると巡り。
それは周囲への注意力を削いでいて。
「危ない!」
そんな声とともに体が後ろに引っ張られる。
目の前をクラクションの音と車が通り過ぎていく。
信号は赤。
「何してるの、冬花!?」
「大丈夫ですか?」
目の前に立っていたのはクラスメイトの泉さんと立花さん。
別に親しいというわけでもなかったけれど。
多分限界だったんだと思う。
視界が段々と滲んでいった。
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