誤爆

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ようやく落ち着いたのは二人に連れていかれた「知り合いの家」。 …どう見ても何かの事務所で入り口の横には「氷月探偵事務所」という看板が出ていたが。 「で、どうしたの?悩みがあるなら相談乗るよ?」 そんな泉さんの言葉に促され、クラスメイト二人とお茶とお茶菓子を出してくれた「ヤスさん」と呼ばれてた強面のお兄さんに事情を話し出す。 もう一人、奥の机で我関せずといわんばかりに読書を続けてるお姉さんも聴いてはいるのかもしれない。 「ひどい話っすね!」 話が終わって憤慨したように言ったのは「ヤスさん」。 「う~ん、別に悪気があったわけじゃないんだろうとは思うんだけど…。」 と泉さん。 何も言わずに怪訝な顔で考え込んでいるのは立花さん。 奥のお姉さんも無言のままだ。 「お嬢、どうにかなんないっすか?」 そのお姉さんに「ヤスさん」が話しかける。 「…どうにかとは?」 そう言って体だけこちらに向けるお姉さん。 今まで読んでる本は見えなかったが、体の向きが変わった事で見えるようになる。 …凄く正統派の文学少女といった趣で、手元の桃色髪と黒髪の少女二人が背中合わせに恋人繋ぎしてるラノベがあまり似つかわしくない。 「いや、例えば相手を巧く言いくるめて結婚を翻意させるとか…」 「できるわけないでしょ。貴方は私を何だと思ってるの?」 「ヤスさん」の無茶振りに対して、本に目を落としたままで冷たい返事。 …まあ、私も当事者じゃなければそう返すだろうから、彼女を責める事はできない。 でも「ヤスさん」の彼女への信頼は厚いらしい。 何かを考え込んだままの立花さんが 「名探偵本の虫。」 と答えている一方で 「何でもできる万能探偵。できる事が人間離れしすぎてて「死神」呼ばわりされてるんすから、人心操作くらいできるっすよね?」 と物騒な事を言い出した。 しかも 「ああ、確かに氷月さんならできそう。」 と泉さんまで「ヤスさん」の発言に乗っかる。 …たとえできたとして、それを頼むのは流石にどうかと思うのだけど。 夏樹さんの心を操って一緒になっても虚しいだけだし。 「だからできないって。」 「氷月さん」(名前からして多分この事務所の主だろう)は溜息を吐いて、読みかけの本に栞を挟み机の上に置く。 「そこを何とか!一組の百合ップルを救うと思って!」 ついに土下座まで始めた「ヤスさん」に 「…私は貴方と違って百合狂いっていうわけではないのだけど?」 と返す「氷月さん」。 さっき机に置かれた『わたしが恋人になれるわけ(以下略)』というラノベは百合物だったと思うけれど、誰かに薦められたのか、「そんな無茶を聞くほど狂ってはいない」という事なのか。 そんな事を考えている私に「氷月さん」の目が向く。 「貴方、その花見さんの職業は知っている?」 唐突な質問。 ちょっと考えてみる。 確か前に聞いた時は 「かっこいい系のお仕事です!キリっ!」 みたいな感じで誤魔化されたので、実際よく知らない。 そう伝えると、彼女は少し考える素振りを見せ。 その手が私の方へと差し出される。 「メッセージ、見せてもらえる?」 「…あ、はい。」
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