誤爆

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それは最悪の誤爆だった。 午前二時四十六分。 携帯のメッセージアプリに表示されているのはさっき送られてきた想い人からのメッセージ。 『こんな時間にごめん。』 『さっき話してた結婚の件について。』 『あの後何回かも考えてみたけど、やっぱり場所がおかしいと思う。』 『忘れない内に送っただけで、時間も時間だし、結構眠いから明日また三人で色々考えよう。』 『PS.式の件はそんなに気負わないで。任せるって言ってもまだ半年以上先の話だから。』 明らかな誤爆だ。 確かに昨日の未明にあの人とちょっとした拍子に結婚についてのやり取りをしている。 でもその時彼女は 『結婚なんて全く考えてないよ。』 とか 『友人が豪華な式を挙げてるのに何回か招かれたけど、その度に苦笑したくなったよ。面には出さないけど。』 とか送ってきていたのだ。 メッセージの「三人で」の部分。 前後の文脈から考えるとあの人とメッセージを送られる予定だった「式を任せられる人」とあと一人。 常識的に考えれば式を挙げるのはあの人と最後の一人だろう。 結婚式の打ち合わせなら当事者二人は参加するのが普通だし、自分の結婚式に「任せる」という表現は使われない筈だ。 あの人、花見夏樹と知り合ったのは、とあるオンラインゲーム上。 一緒のパーティーになったのがきっかけで、ゲーム内やSNS上で会話している内にゲーム以外にも色々と趣味が合うのが判って。 話の流れで近くに住んでいる事が判明し、実際に会ってみようとなって。 もし恐い男の人が来たらどうしようとドキドキしてる中、実際にやってきたのはかっこいいお姉さんで。 それからの時間はとても楽しくて。 基本的にはそれまで通りゲームやSNSを通じてだったけど、その時に交換したアドレスで直接メッセージアプリで会話したり、たまに直接会ってお話したりするようになって。 私はどんどんこのお姉さんに惹かれていった。 会ってお話してるときたまに話題が仕事の愚痴になる事もあって、その時の様子からは彼女が男性を毛嫌いしているように思えた。 「だって、あいつら、女だってだけで私達を見下してくるのよ!いくら男メインの職場だからって、今は男女平等の時代だっての!冬花ちゃんもあんな奴等相手にしちゃだめよ?」 自分のお家で私が飲めないお酒を飲みながら愚痴っていた夏樹さん。 あの後、私が油断している間に男性観を変えるような出会いがあったのか、それともそもそもお相手が女性なのか。 何で彼女は昨日嘘を吐いたのだろう? 冷静に振り返ってみると、多分私の好意は駄々洩れだったと思う。 だから私に告げるタイミングは慎重に見計らっていたのだろうか? 今までずっと優しく接してくれてはいたけれど。 あまり考えたくはないけど、大分年下の私の好意ってどう思われてたんだろう? 鬱陶しいだけだったのかな? 色々な考えがずっと頭をぐるぐるしていて。 その夜は全く眠れなかった。
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