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「柚香最近どうなの? 仕事の方、順調?」
「んー、同期にしつこい男がいてうざったい」
「もしかして前会った時に言ってた男?」
「うん、そう。相変わらず毎日連絡してくるの」
先に運ばれてきたアイスティーをストローでかき混ぜながら、私はため息をこぼした。
「映画行こうとか今何してるの、とか。正直めんどくさい」
私の話を聞いて美鈴は困ったように、でも楽しそうに笑った。
美鈴のアイスカフェオレはまだミルクとコーヒーが混ざり切ってなくて、マーブルみたいになっていた。
「柚香は逐一自分の報告とかするの苦手だもんね。SNSアップするのも嫌いでしょ?」
ドキリとした。
「……うん、嫌い」
美鈴のほうからSNSの話題を出されたことに心臓が変な音を立てた。
視界に入る美鈴の指の長い綺麗な手。
控えめなデザインのネイル。
控えめに光る、指輪。
「あのさ、美鈴。この前……」
「お待たせいたしました。チョコバナナパンケーキとストロベリーパンケーキになります」
意を決して開いた口を思わず閉ざした。
愛想笑いを浮かべた店員がテーブルに大きなお皿を置いていく。
なんの装飾もない白い皿にのせられたパンケーキ。
うっすらきつね色に焼かれた3枚のパンケーキに真っ赤なベリーソースがたっぷりとかけられていた。
イチゴとベリーがごろごろと転がっている。
そして、真っ白なソフトクリーム。
皿の端っこにのせられたそれは、パンケーキの熱で溶け始めていた。
「美味しそうだね!」
「……うん」
美鈴がスマホを取り出して一枚、写真を撮った。
私もなんとなく真似をするかのように写真を撮ってみたけれど、あんまり美味しそうに撮れなかった。
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