マーブルパンケーキ

5/8
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「柚香最近どうなの? 仕事の方、順調?」 「んー、同期にしつこい男がいてうざったい」 「もしかして前会った時に言ってた男?」 「うん、そう。相変わらず毎日連絡してくるの」  先に運ばれてきたアイスティーをストローでかき混ぜながら、私はため息をこぼした。 「映画行こうとか今何してるの、とか。正直めんどくさい」  私の話を聞いて美鈴は困ったように、でも楽しそうに笑った。  美鈴のアイスカフェオレはまだミルクとコーヒーが混ざり切ってなくて、マーブルみたいになっていた。 「柚香は逐一自分の報告とかするの苦手だもんね。SNSアップするのも嫌いでしょ?」  ドキリとした。 「……うん、嫌い」  美鈴のほうからSNSの話題を出されたことに心臓が変な音を立てた。  視界に入る美鈴の指の長い綺麗な手。  控えめなデザインのネイル。  控えめに光る、指輪。 「あのさ、美鈴。この前……」 「お待たせいたしました。チョコバナナパンケーキとストロベリーパンケーキになります」  意を決して開いた口を思わず閉ざした。  愛想笑いを浮かべた店員がテーブルに大きなお皿を置いていく。  なんの装飾もない白い皿にのせられたパンケーキ。  うっすらきつね色に焼かれた3枚のパンケーキに真っ赤なベリーソースがたっぷりとかけられていた。  イチゴとベリーがごろごろと転がっている。  そして、真っ白なソフトクリーム。  皿の端っこにのせられたそれは、パンケーキの熱で溶け始めていた。 「美味しそうだね!」 「……うん」  美鈴がスマホを取り出して一枚、写真を撮った。  私もなんとなく真似をするかのように写真を撮ってみたけれど、あんまり美味しそうに撮れなかった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!