1人が本棚に入れています
本棚に追加
覚醒
僕は今、不思議な空間を漂っている。美術の資料集で見たダリの絵のように、周りに存在する物がグニャリとねじれているような気味悪い空間だ。その空間の先に白い光の円が見えた。
光は僕の体を照らし、次の瞬間、覚醒した。
「どういうこと?」
目の前の光景に思わず声に出た。僕はいつの間にか制服を着て、教室の自分の席に座っている。先生が日本史の授業を行い、周りにはクラスメートたちもいる。
おかしい。パジャマを着て、家の自室のベッドで寝たところまでははっきりと覚えているのだが。
(なんだ、夢がまだ続いてるのか……)
明晰夢とかいう、夢の中で「これは夢だ」と分かるやつか。僕はそのまま授業を黙って受ける。
夢のようなおぼつかなさは無く、かなりはっきりと意識がある。ペンやノートの感触もあるし、エアコンの寒いくらいの風も感じて、妙にリアルだ。おかしいのは、授業内容が昨日の昼間に受けた内容と全く変わらないことだ。それに、気になるのが黒板の日付だ。昨日の日付のままだ。
「そんな、まさかね。」
隣の席の女子が怪訝な顔でこっちを見ているような気がするが、どうでも良かった。
夢か現実か分からないまま、僕は夜を迎えてしまった。
家の夕飯も、前日食べた辛口の麻坊豆腐が出てきたし、母が見てるテレビの番組も前日と同じ内容が流れていた。
さすがにおかしい。
僕は夕食も早々に自室に戻り、ベッドで目を閉じた。
(どうか、次に、目を覚ました時には明日になってますように。)
しばらく眠れない時間を過ごし、気づくと、また、あのダリの絵のような空間にいた。白い光に包まれ、目を開いた。
「嘘でしょ。」
今度は家の食卓の席に座り、目の前に麻坊豆腐が置かれていた。流れているテレビの番組の内容はやっぱり同じものだ。
僕にとっては夕食と言うべきかもわからない麻坊豆腐をかきこんで、自分の部屋に入り、ベッドに寝転んだ。
夢か、現実かを考えていたが、五感がしっかり働いていて、これだけ意識がハッキリしてると、どうにも現実なんじゃないかという考えが勝る。
「やっぱり、そうなのか。」
僕の眠れない時間は朝まで続いた。
最初のコメントを投稿しよう!