挨拶

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挨拶

「あなたも動物が好きなの?」 彼女の問いに僕は頷く。 「そうなんだ。私も好き。特にキリンが好きなの。目で何かを訴えて来るような気がしてかわいいじゃない?」 彼女は目の前にいるキリンとにらめっこしようとしている。時折、口元をイーっと歯を見せるようにして相手の反応を伺っているようだ。 「あなたも、かわいいね。」 彼女の視線は僕に移る。男子高校生としてはあまり嬉しくない褒め言葉だが、大学生くらいの彼女からすれば、こんなものなのだろう。 「昔からこの動物園に通ってるんだ。私と同じことをしてる人がいて嬉しいよ。」 黒いロングヘアの彼女は日傘を差し、肌は色白で透き通るようだ。 僕は毎日、平日の朝、まだ通学の時間帯ながら無料開放されている動物園を、通学路として園内を通リ抜けている。お客さんも少なく、不思議と落ち着く空間だということに気づいてからは、毎朝園内をぐるりと散歩しつつ学校に向かうのが習慣だ。 自分と同じように朝に園内に来てはキリンを眺めている綺麗な女性の存在には以前から気づいていたが、今日初めて彼女の方から声をかけてきたのだった。 「病気があってね、あまり日中には外を出歩けないの。でも、動物が好きだから、なんとかして会いたくてね。」 彼女は動物園の思い出や病気のことまで明るく楽しそうに話した。ただ、僕は人との会話が得意でなく、相槌を打ちながら聞くことしかできないでいた。 「あ、もうこんな時間!また、会おうね。」 そう言って彼女は片手を振って去っていった。
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