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今日は夫となる人と私の親戚ができるだけ多く集まれるようにと決めた日で、式場は割と空いている日だと聞いている。だから今日は使われないチャペルがあると。
廊下に出る。周囲を見回す。偶然なのか、誰もいない。これ幸いと走り出す。走り出したら靴が少し邪魔で脱ぎ捨てる。カーペットがあるからそのままでも走れる。
交差した廊下にスタッフの人がいたような気がしたけれど異変には気づかれなかったようだ。
走って、走って、走って。ようやく目的のチャペルに着く。ドアをそっと開ける。人はいない。
電気はついていないけれど、外から差し込む光で明るい。二人のためにふさわしい光景だと思った。
本来なら愛し合う二人の誓いの場所に一人で立つ。
かみさま、あなたは私たちを認めないのでしょう。私たちの関係も、私たちの選択も。けれど私たちは同じところへ行きます。同じところへ行くためにあなたに祈ります。
どうか、私たちを引き離さないで。同じところへ。
祈りの作法もわからないまま手を組んで祈る。
祈り終わって手をほどいて。柄を持ちなおして首に向ける。一呼吸、そして一気にかき切った。
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