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 ショートボブの溌溂とした目をした若い女性が、深々と頭を下げた。 「こんにちはっ、妙子ちゃん、今日は会ってくれてありがとう」  妙子も慌てて頭を下げた。 「こちらこそ、父がいつもお世話になっております」 「いえいえ、そんな」 「いえ、ほんと」 「二人とも、とりあえずお店に入ろう」  恐縮しあう妙子と楓を、茂が促した。今日は初顔合わせの食事会だ。  茂と楓が先を歩き、妙子が3、4歩遅れてついていく。妙子は、二人が並んで歩く姿を好ましく眺めた。とても年齢差12歳には見えない。楓が落ち着いているからか。茂が年の割に若く見えるからか。両方が合わさって、ちょうどいい年齢差の二人に見えるのか。  ただ、妙子には気になることがあった。 (楓さんって、多分・・・)  風の力を操る一族。  恐らく力自体は薄れており、発揮されることはない。まして、自分がそんな力を持つ一族の末裔だと知りもしないはずだ。  けれど、妙子には何となくわかる。妙子の中に流れる血筋が、それを教えてくれる。  妙子は空を見上げた。お日柄もよろしく、といった快晴だ。梅雨の晴れ間。 (お父さんって、どうしてこう、巻き込まれる人なんだろう)  父の結婚を祝福したい。祝福したいのに、これではし切れないかもしれない。  妙子は首を振った。 (ううん、大丈夫。だって、楓さんは関係ないはず) 「妙子」  茂が呼んだ。妙子は距離が広がっていたことに気づいて、小走りした。
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