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おやすみの時間は毎日やってくる。少年にとって、この時間はゆううつでしかたなかった。
なにしろお母さんもお父さんも、お兄ちゃんもみんな寝てしまい、仲の良い友達とも遊べないのだから。
真っ暗な部屋の中でひとり。
昼間楽しく遊んでいたロボットのおもちゃも、新幹線のおもちゃも、みんなみんな寝てしまう。
話しかけても返事はなくて、それが少年にとってはとてつもなく寂しかった。
だから少年はいつも、ぎゅっと目をつむって、早く朝になれと祈りながら眠りにつく。
しかし最近は、そんな少年の祈りは届かず、夜がとても長かった。
この前怖い夢を見てから、少年はなかなか寝つけなくなってしまったのだ。
今夜も。祈りの手をそのままに、少年は布団の中でごろごろ、右を向いたり左を向いたり。
色が消えた世界でひとり。
どこか言い知れぬ恐怖がどんどん膨れ上がってきて、少年は鼻をすすった。
ぎゅっとつむっていた目から涙が零れてくる。
少年は上体を起こし、服の袖で一生懸命それを拭った。
しばらくして、少年の視線が部屋の一角へと向いたのは、わずかに開いたカーテンの隙間から差し込んでいる、ぼんやりとした月明りを見つけたからだ。
濡れた袖でごしごしと目元をこすった少年の視界の中で、頼りなかった月明りが、しだいに強く、はっきりとしていった。
何度目かの瞬きのあと、月明りに透けたカーテンに、人影が映っていることに気がついた。
少年は喉の奥で小さな悲鳴を上げて、布団を握りしめた。
その影は身動きせず、ただ佇んでいるようだ。
それと同じに、少年も動かずに息を潜めて、かの人物の影から少しも目を離すことなく見つめていたが、やがて恐怖よりも興味の方が勝ってきた少年は、カーテンの向こう側にいる人物に気づかれないように、そっと布団から抜け出した。
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