カモフラージュ

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 こうして私たち姉妹は、夫婦として新たなスタートを切った。  結婚直後に転勤が決まった私に合わせて二人で上京し、あっちゃんは新天地で待遇の良い事務仕事を見つけた。  両親と離れたことに加え、転職先がセクシャルマイノリティへの配慮が進んでいたこともあって、あっちゃんは女性用スーツで通勤するようになった。  生まれたときから見てきたあっちゃんが今までのどの瞬間よりも生き生きとしていて、私は自分のことのように嬉しかった。  化粧品メーカーが新作コスメを出すたびに二人でデパートに試しに行き、週末はファッションビルを巡った。  堂々と女性として振る舞えるようになったのだからすぐに彼氏を作るかと思ったが、「今は恋愛よりもおしゃれがしたい」とのことだった。  ある夜、バーゲンの戦利品を使ったおうちファッションショーを終えたとき、あっちゃんは「ねぇ真由」と切り出した。 「親元にいたときはとても無理だったけど、あたし、体を女に近付ける治療を受けたい」  何でもない口調を装っていたけれど、ずっと思い詰めていたのだろうとすぐにわかった。 「真由は賛成してくれる?」  すぐに返事ができなかった。即答しなかったことに何かを感じたのか、あっちゃんは黙って私の横顔を見つめている。 「私も考えていたことがあるの。あっちゃんが性別適合する前に、私たち、子どものことを考えなくていいかな?」  隣で彼女が息を呑むのが聞こえた。
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