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「私と……結婚してみない?
法律的にはあっちゃんは男なんだから、女の私と籍を入れてしまえば、周りは納得するよね。カモフラージュ婚っていうのかな」
「えっ、あたしと真由ちゃんが結婚? ……真由ちゃんはそれでいいの?」
「うん、私はやっぱり恋とか愛とかよくわからないや。男の人って苦手だな」
あっちゃんの初恋に焦らされた中学時代から高校、大学と進んでも、私に好きな人はできなかった。
サークルや街コンで知り合った人と交際してみても、性的な視線や距離の近さに疲れるばかりで、あっちゃん以上に安らげてずっと一緒にいたいと思える人なんていなかった。
煮え切らない私の態度が腹に据えかねたのか暴力を振るわれたことがあって、いつからか男性を見ると体全体に緊張感が走るようになっていた。
その男性警戒フィルターが、肉体は男であるはずのあっちゃん相手には作動しなかった。
「あっちゃんのことを私は心から女だと思っているんだと思う」と言ったら、あっちゃんは頬を緩めた。
「あたしは真由ちゃんと一緒にいるときだけは女の子でいられる。本当の自分を隠さずに自由でいられるの」
その言葉に、私の方こそ救われた。
自分のような欠陥人間でも必要とされていると思ったら、体の奥底に沈んだ澱が消えていくようだった。
同時に、ただの妹分だと思い込もうとしてきたあっちゃんへの想いがごまかせなくなった瞬間でもあった。
男相手にどれほど頑張っても得られなかった愛しいという感情が自然に降りてきた。
likeなのかloveなのか、好きの種類はわからない。でも私は、あっちゃんのことが好きだった。
あっちゃんを幸せにできるのなら、私の人生などいくらでも差し出せた。
「あっちゃんは好きな男の人ができたら自由にお付き合いしたらいいんだよ。世の中がなんと言おうと、妻である私が許す!」
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