カモフラージュ

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 あっちゃんのお母さんがどう反応するか不安だったけれど、幼少期にいい顔をされなかったのは、あくまで息子の遊び相手に女子は似つかわしくないということだったらしい。  いくら隣に住む幼馴染みでも、男女で登下校すれば冷やかされたりするんじゃないかという心配もあったみたいだ。 「真由ちゃんはしっかりしてるし、結婚相手には歓迎だわ。敦をよろしくね」と笑ってくれた顔を見たとき、初めて打ち解けられた気がした。 「あーあ、本当は盛り髪にウェディングドレスが着たかったなあ。 あたしは物心ついたときからずーっと心は女なのに、『母が男の子を生んだ』という事実一つのせいでどうして自由に生きられないんだろう」  真っ白なタキシード姿のあっちゃんが、ヘアメイクを仕上げてもらっている私を見て羨ましそうにため息をついた。  お義母さんに促されて嫌々、いつも長めに整えてもらっていた襟足を切ったらしい。 「今久しぶりに思い出したけど、中学、高校の制服も男子用のズボン穿()かなくちゃいけないの嫌だったなあ」 「そうだったねえ。まぁ私服でもあっちゃん、うちに来たときにママの作ったワンピースを着る以外はずっとズボンだったけど」 「そりゃ毎日普通にスカート穿きたかったけど、ズボンは女でも穿くものだしまだよかったよ。 制服は男女に二分割された上で、お前はそっち側だって言われてるみたいでつらかったの。 真由ちゃんが卒業するとき、そのスカートお下がりでちょうだいって言えたらどれだけ良かったか」 「あっちゃん体育の柔道もずっと文句言ってたよね」 「だって女子の方からエアロビクスのおしゃれな音楽が流れてくるのに、男子は無骨に受け身の練習だよ? 痛いし地味だしむさ苦しいし、ただただ地獄」
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