さき

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さき

 あっちゃんと私は、家が隣の一人っ子同士ということもあって姉妹のように育った。  私が三歳のときにあっちゃんが生まれたことは思い出せない。  私の方が年上なのに、自分が生きてきた中であっちゃんのいない時間なんてないも同然だった。 「あなた、赤ん坊のあっちゃんを無理に抱っこしようとして、小さな足でほっぺを蹴られたじゃない」  あっちゃんとは生まれたときから一緒にいるみたいな気がするんだよね、と言ったらママはそう言って笑った。  あっちゃんのお母さんはキャリアウーマンで、折り目正しくて、少し怖い人だ。  生まれつき体が弱く、少しはしゃいだだけですぐダウンしてしまう私では、あっちゃんの遊び相手として相応しくないと思われている気がした。  だからあっちゃんの家には入りづらく、私たちが遊ぶのは決まって我が家だった。  うちのママは専業主婦だからいつも家にいたし、裁縫が得意で私たち二人に手作りのワンピースを着せてくれた。  小学生が着るには少し丈が短めのスカートをはためかせながら「うちでは絶対こんなの買ってもらえないや」と、あっちゃんは弾んだ声を上げた。 「うちの真由(まゆ)のお下がりや素人のハンドメイドなんて、あっちゃんのお母さんに知られたら怒られちゃうね。三人だけの秘密だよ」  ママはそうウインクして、仕上げに子ども用の化粧パウダーを私たちの顔にぽんぽんとはたいてくれた。
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