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 しかし、潜伏は容易ではなかった。  扉や窓が、連日激しく叩かれる。村人の罵詈が、ゴミのように投げられる。嘗て家族のように親しくしていた分、拒絶はアメとトイ二人の心に激しく轟いた。 「……アメ、俺はもういい」 「駄目だよ。出ていったら父さん殺されちゃう。それに僕は信じてないから」  シーツに包まれながらアメは言う。右手は確りとトイの裾を掴んでおり、視線も横顔に注がれていた。対照的にトイの焦点は火傷の残る腕にあった。 「……俺だってよく分からないし信じたくはない。けど否定もできないだろ。それに……」  トイは尻目でひっそりとアメを見遣る。瞳をなぞるように、濃い隈が張っていた。  アメはもう何日もまともに眠れていない。外の声が大きいから、とアメ自身は呟くが、原因は分かっていた。絶え間ない悪夢のせい――自分が横にいるせいだ、とトイは確信していた。 「俺だって、アメを死なせたくはないんだ」 「僕ちょっとは寝てるし大丈夫だよ。ね」 「でも……」 「大好きだよ、父さん。だから今は何も言わないで」  それから、二人は何日も籠り続けた。いつかは訪れる終わりに怯えながら。
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