気がかりなお星様

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 お星様が帰ったあと、子ども部屋のドアがそっと開きました。かんたくんのパパです。おねしょのことをママからきいて、心配になってのぞいたのです。 「あ、パパ、お帰り」  パパはびっくりしました。いつもなら寝ているかんたが起きていたのですから。 「ああ、まだ寝ていなかったのか。あのなあ、かんた……」  パパはかんたに話し始めます。 「おねしょはな、悪いことじゃないんだぞ。むしろ、良いことなんだ。失敗は成功のもと……」 「成功のもと!」  パパの言葉に合わせるようにかんたが叫びました。 「ぼく、知ってるよ! 失敗は成功のもとなんでしょ? さっき、赤いお星様が教えてくれたの」  パパは、何だかとても懐かしい気持ちがしました。  そうです、パパも子どものころ、赤いお星様にこの言葉を教えてもらっていたのですから。お星様の昔のお友達は、パパだったのです。  けれど、お星様とお友達になったことは、大人になったら忘れてしまうんですって。  それでパパは懐かしい気持ちがしたのでした。  でもね、すっかり忘れてしまったわけではないんだよ。ほら、パパのネクタイを見てごらん。あのお星様みたいに素敵な赤色でしょう?  昨日まで泣き虫だった息子の顔は、今は少しだけしっかりして見えました。パパはこれでもう大丈夫だと思いました。  パパはかんたに「おやすみ」を言って、静かにドアを閉めました。
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